2010年12月13日月曜日

モンゴルの床ずれ事情

先月の事。

突然看護部長から、
『明日、褥瘡(床ずれ)ケアのセミナーを家族病院の看護師達にしてくれないか。』と言われ、
『さすがモンゴル。明日かぁ・・・』と内心焦ったものの、
これはチャンス!!と思い実施しました。

なぜならば、モンゴルでは間違ったケア・処置によって重度の床ずれになってしまうケースが多いからです。

ちなみに家族病院とは日本で言えば『診療所』にあたります。
我がバガノールには4つの診療所があり、管轄地区にて1次医療を担っています。

そんな褥瘡(床ずれ)セミナーを行った数週間後、
家族病院の看護師長から1本の電話がかかってきました。


『あや、今在宅で褥瘡(床ずれ)の患者さんがいるのだけど、

ケアをどのようにしたらいいのか分からないから一緒に行ってくれないか。』

こういった連絡が1つあるだけで、

自分の行っている事が少しずつ受け入れられているんだ・・・と思い救われる。

その一報は、私にとって物凄く嬉しい連絡だった。


しかし実際に行ってみると、物凄い数の褥瘡。

両肩・背部・臀部・両大転子部。全て真っ黒の硬い皮膚に覆われいて、
ケアというよりも処置を要する段階。
臀部は表皮・真皮を含む皮膚欠損、皮下脂肪にまで及ぶ褥瘡。

▼ここまで放置させ
てしまう現状がここにある


83歳のおばあちゃん。8年前に脳出血で倒れ、それ以来寝たきり。
なんでこんなにまでなってしまったのか・・・。

壊死し、硬くなった黒い皮膚は専用の薬剤で溶かし、

外科的に除去しなければならないのですが、

モンゴルには日本のように『床ずれ専用の薬剤・ドレッシング剤』がありません。


悲しくなるくらい・・・
ない。

だからこそ『予防』が必要になってくる。

でも、今は『予防』どころじゃない。
『治療』が必要なのだ。


皮膚を溶かす薬がないのなら、どうやって溶かすか・・・。

溶かすのは難しくても、柔らかくする方法はないか・・・。


その場で判断しなければならない。

先ずは丁寧に微温湯で褥瘡を洗浄。

▼師長さんと洗浄


勿論
族にも見てもらって、毎日洗うよう指導する。

洗浄するシャワーボトルがないため、
ペットボトルの蓋に穴をあけてシャワーがわりにしました。


臀部の褥瘡は皮下脂肪にまで達し『むき出しの状態』なので、
洗うたびに『痛ーい、痛いよー!』と泣くおばぁちゃん。

痛み止めもないばかりか、褥瘡に塗布する薬さえもない。
貧しさのせいで必要な薬が買えない現状。

幸いにもモンゴルでは乾燥したところに塗るといいとされている
『ラクダの骨髄からとった脂』があり、 その脂を褥瘡に塗布。

褥瘡に脂をかぶせる


ガーゼを置く事で更に褥瘡を乾燥させてしまうので、
空気は通すが水分は逃がさない『ラップ』を貼ろうと試みたが、
その家庭にはラップがない。


いや、バガノールでラップなんて見たことない。

考えること数分。


ゴミ袋を
褥瘡の部分に合わせてカットし、
ガーゼを覆うように貼り付けました。



ムレることによって、別の褥瘡が発生しませんように・・・と
神様に祈る気持ちで。

ムレは褥瘡にとって好ましくない環境。
でも、今はこの硬くなった黒い皮膚をふやかす方が最優先。

とにかく家族には毎日微温等で洗浄すること、最低2時間毎にひきずらないよう体位変換すること、栄養のあるものを食べさせてあげること、の3点を指導。

その帰り道、褥瘡に効く軟膏はないかと薬局を訪れた。

褥瘡の写真を見せると、

『これは難しいね』・・・と冷たく一言。

渋々棚から1つ薬を出してくれたけれど、
怪我をした時に塗る軟膏だそうで・・・。

治してあげたいのに、治すための薬がない。

だからって落ち込んでられない。

やれることの最善を尽くす。


おばぁちゃんの苦痛を少しでも取り除くために。

2010年12月11日土曜日

うちのおとん

私のおとん。今年で61歳。
還暦を過ぎた辺りから、どうも行動がおかしい。


《おかしい行動》

その1:出国直前、『これは送らないでいい荷物だからね!』と何度も
念を押したのに、その荷物を自信満々に送ってきた。しかも大ダンボール3つ分。(@@)

その中には以前住んでいた家の契約書、生命保険証書、履歴書、モンゴルでは着る事の少ない夏服等々・・・。
『いやぁ~、無事に届いて良かった!!』と誇らしげに言うおとんに対し、 怒るに怒れなかった(笑)

その2:炒ったコーヒーを飲むために、 ドリッパーを送って欲しいと写真付で携帯にメール。

『あやさん、ドリッパーというものがよく分かりません。 お店に行って聞いてきます。』

『えっ!?だから写真付で送ったじゃないっ。』(@@)

でもお陰さまで無事に2個、届きました。


その3:先日智ちゃん(私の妹)と買い物をした際、ネックレスを買ってあげました。
あやさんにもとお揃いで買ったので楽しみにしていてね。

その連絡があって既に3ヶ月。

未だにやってきません(笑)


その4:『最近、言葉がなかなか出てこない・・・。何かの病気か?』と連絡あり。

いやいや、おとん。よ~く喋れているよ(><)

その5:モンゴルは冬になると緑の野菜がぐんと減るので、青汁を送って欲しいと依頼。
10袋入りを3袋くらい送ってもらえると助かります♪と追記。


『あやさん、昨日銀座まで行き、指定の青汁を帰国に合わせて半年分購入しました。 あとはあやさんの好物も送ります。』

『はっ、半年分~~~~~?半年分って!?』

しかし待てど暮らせど荷物がバガノールに届かない。
すると首都の郵便局から電話が。

『日本から荷物が届いているが、中身をチェックしなければならないので、 急いで来い!!』

『ひっ、ひぇ~~~~~~~~~~!!!』


どうも半年分の青汁が、ゲートチェックした際に何らかの薬と間違えたらしい(><)

荷物を受け取りに行くために首都へ。

チェックも済ませ無事に受け取れたものの、
その荷物の送料が、なっ、なんと11キロ(@@)

中身は半年分の青汁の他に、餅5キロ、カレールー・シチュールー共に5箱、きなこ3袋、
砂糖1キロ、ボアシーツ、鰹節(ボーナスパック)、とろろ2袋、ゆかり5袋、 パスタ2袋、のり2袋、梅干1パック。
私の大好きな干し芋5袋、かりんとう7袋・・・。

もうビックリ(@@)

いや、これも初めてのことではありません。
今までおとんが送ってくれた救援物資、数えること6回。
全て10キロ超えの大入り。

前回は二層式洗濯機にはかかせない『くず取りネット』も10個入っていました。
便座カバーも送ってくれたのはいいのですが、『U字タイプ』。
残念ながら我が家は『O字』タイプ。悲しい事に使えない(><) 一言相談してくれればいいものを・・・。

そうなんです、いつも1つのものが大量なんです。

なので送ってくれた日本食材が未だに食べきれないのです。

更にモンゴルは手紙・小包・荷物全てが郵便局で止まってしまい、
日本のように自宅まで配送してくれるサービスはありません。 なので郵便局から連絡があったら、取りに行かなくてはならないんです。 それも何度も言っているんですが、毎回大入り(笑)

そんな矢先、今日おとんから1通のメールが。


『あやさん、本日今年最後の救援物資を配送しましたので、 受け取ってくれたし!』

あっ、赤紙だ~~~~~~~~~~ぁ(@@)

『どのくらいの荷物?』

『10キロだよ!また餅と干し芋、お菓子も入れておいたから堪能されたし!』

10キロのお菓子って・・・。


10キロのお餅とお菓子を食べて、私は牛のように丸々太っていく。

遠くからドナドナが聞こえる。
『ドナドナド~ナ、ド~ナ。子牛をの~せ~て~。』
私は家畜として売られていく・・・。

おとんの愛が重すぎます(笑)
元来、こういう人だったのかな?

でも、ありがたいことですね。

帰国したら、沢山親孝行したいと思います( ´ー`)ノ

JICAセミナー 2010冬~番外編~

先月JICAセミナーを行った際、
『活動紹介パネル』となるものを作成しました。
しかし、そこでやはり不安なのが自分で書いたモンゴル語。

そのチェックをしてもらうべく、
モンゴル人の友人に見てもらった時のこと。

『あ~、これはこう書いた方が分かりやすいよ。』

『あ、これもこう直した方がいいね。』

・・・と校正箇所が出てくる、出てくる(><)

しかし数枚の活動資料を見ていく中、

『あや、色々な仕事をしているんだね。モンゴルのためにありがとう。』
・・・と私に投げかけてくれた。

思いもよらない『ありがとう』だった。

JICAセミナー 2010冬

先月、ボランティア隊員が首都に集結し、
『JICAセミナー』と題しモンゴル人対象に6日間にも亘るセミナーを行いました。

目的として、以下3つ。
1) ボランティアの専門分野の知見を、配属先以外にも広くモンゴル人に伝え、モンゴルにおける当該分野の発展に寄与する。
2) 同職種、または幅広く、JICAボランティア間の連携を深める。
3) カウンターパートや配属先の同僚と共にセミナーを行うことで、当該者間の連携を深める。

構想期間、約半年。

JICAセミナー委員も並行して行っていたので、毎月首都に上京するのは正直大変でしたが、その分他職種のボランティア隊員との団結も深まっていいものが出来上がったと思っています。

任期中、こんな大きなセミナーをするのは最後。
欲張りな私は『応急処置法』『看護過程』の2コマを担当させてもらいました。

運命の11月24日。
午前中は同期の体育隊員と共にスポーツ紹介の後に『応急処置法』。
かなり楽しく行えたので、メンバー全員いい笑顔。

真ん中はモンゴルに来て初めてできた友人ナナ。今回通訳として頑張ってもらいました。


午後は看護系隊員による『看護過程』セミナーを開催。
『看護過程』
は、看護ケアを必要としている患者や病人に、その人に可能な限り最良で、最善のケアを提供するためにどのような計画、介入援助が望ましいかと考え、計画、行動していく一連の思考と行動の経緯のことです。

このセミナーを行うにあたり、モンゴルにて『看護過程』のニーズがあるのか。
日本で行われている『看護過程』は果たして受け入れられるのか。
看護系セミナーは赴任してから初めての試みであり、言い換えれば挑戦でもありました。
なぜならば、日本で取り入れられている『看護過程』とモンゴルで現在取り入れられている『看護過程』には多少のズレ(遅れ)があり、モンゴル人が“日本人と看護過程について学びたい”。
いや、
それよりも看護過程と言うものに関してそもそもニーズがあるのかも不明な点であり、当初は40人定員としていたんです。

最初は来場者人数が全く読めない状態でしたが、実際は110人もの医療職の方々が足を運んでくださり、とてもニーズの高いものだと改めて感じ、今後も必要なテーマであると確信しました。

『看護過程』はモンゴルに入ってきてから10年ほどしか経っておらず、
まだまだ浸透されていないのが現実。わが活動先バガノールでも導入して5年しか経っていない。
そのため、「患者のためのもの」であるものが、未だ「看護師のためのもの」となっており、看護師の仕事の評価基準の手段として使用されているため、患者さんに還元されていない。

しかし、セミナーの際のグループワークでは沢山の意見が飛び交い
(生憎手元に写真がないため伝わりにくいのが残念ですが(><))、
『看護計画は患者を主語にした目標を掲げるからこそ計画が生きてくる・・・』
そういった私達の講義を真摯に受け止めてくれたモンゴル人は、まだまだ向上できる可能性を秘めていると感じました。

ある意味、術を知る機会がないから「看護師のためのもの」に留まってしまっているのだと思う。今回のセミナーを通じて、実施したテーマはニーズに適していたものであり、今後も継続していく上で更に大きな成果を果たせるのではないかと考えています。

セミナー終了時点で、『是非私達の病院に来て講義をして欲しい』と言った要望が聞かれ、今回通訳を引き受けてくれた看護大学の講師も
『ならば是非私達も手伝いたい。
看護過程はこれからもっと必要になるから。』
・・・と私達のサポートも意欲的。


今後の課題は一生懸命作成した資料を今回のセミナーだけで終わらせず、
『看護過程セミナーキャラバン』と題し、看護系隊員と共に首都の病院から巡回するといった事をやっていきたいと考えています。

毎回感じる事ですが、大きな事を成し遂げるためには決して1人ではできない。
仲間が1つの目標に向かって力を合わせる事で、とても大きな力になる。

▼看護系隊員と今回セミナーを手伝っていただいた、
デーギーさん、バサー、ツェツェゲー。


みんな本当に有難うございました!
そしてこれからも頑張ろうp(^-^)q

2010年12月10日金曜日

小包

今日、とっても可愛いプレゼントがバガノールに届きました!

▼以前働いていた職場の仲間から。クリスマスカードと共に♪


▼羊の手袋☆可愛いすぎます(≧∇≦)


▼さすが看護師!!生理食塩液の空き箱に入れて送ってきてくれました(笑)


カードにはみんなの温かい言葉が。

我が活動先バガノールはとっても寒い町で有名。
今日もマイナス25度!!

ですが、そんな寒さも吹き飛んでしまうくらい、
温かい気持ちでいっぱいになりました。

日本を経って1年半。
こうして気にかけてくれる友人がいるのは、本当に有り難いことです。

ゆりっぺ、かほりん、がっき~先輩、本当にありがとう。

私はとても幸せ者です( ´ー`)ノ

2010年12月9日木曜日

2代目

モンゴルはとにかく乾燥していて、
電気もち?の私は毎日のように静電気
に見舞われ痛い思いをしています。
静電気ばかりか肌にも大きく影響。
そのため加湿器はかかせないアイテム。

去年早速『花』の形をした加湿器を購入したのですが、
あっという間に壊れてしまい、已む無く2代目を買う事に。

しかし何件回っても加湿器がない。
『あった!!』と思っても、ヨーロッパ製で驚くほど高い(@@)
ここでなかったら最後・・・と訪れた電気屋になんと手ごろな値段の加湿器があった~~ぁ!!!!

でも。。。でも。。。とにかく見た目が怖い加湿器。


『お、おじさん、これしかないの?』

『そうだね。今はこれ1つしかないなぁ。どうする?』

見た目の怖さに数分考えたが、手ごろな値段に負けて購入。

どれだけ怖いのかと言うと・・・


こっ、怖いですよね~~~!? 猪なのか牛なのか未だ不明・・・(@@)


しかも、”鼻から水蒸気がぁっ~~~!!!!" (@@)

なっ、何で鼻からなんだ!?
せめて口とかから出るようにすればいいのに(><)


ですが、我が家に来る人達は必ずこの子を見て笑ってくれます☆
しかもこの間南ゴビから来た同期は写真に収めて帰って行きました(笑)

笑いを誘うこの子。
でも、夜中に目が合うとやはり怖いです・・・。

2010年12月8日水曜日

念願の歯磨きセミナー

先月は目が回るほどの忙しさ。
殆ど首都に滞在していたため、またもや久しぶりの更新です(><)
みなさん、お陰さまで私は元気にやっておりますp(^-^)q

今日はゲル地区にある幼稚園に赴き、
主に年長さんを対象に歯磨き指導をしてきました!!

・・・というのも、
同期の幼稚園教員から『歯磨きセミナーをしたい』と
いった相談を受けた事から始まりました。

モンゴルの子供たちはとにかく虫歯が多い!!
口を開けさせれば歯の間は真っ黒・奥歯はボコボコ真っ黒な穴が開いている(><)
更には歯が殆どない子供がいたのにはビックリでした。

理由は常に口の中に飴玉が入っている環境下である事。
歯磨き粉を沢山つければ汚れが落ちると思っている事。
そして親御さんの管理のあまさ、等々・・・。

数ヶ月前、そんな状況を日本にいる歯科衛生士の友達に話したら、
”モンゴルの子供たちのために”・・・と歯垢染色液や歯ブラシを大量に送ってくれたんです。
ですがなかなか『歯磨き指導』となるものが行えずにいました。

それが今日、現地の小児歯科医師も引き連れ行える事に!!
わざわざ午前中の診療を空けてまで来てくれました。感謝☆

前日に40℃近くの熱を出しながらも、
頑張って作成した人形で先ずは劇をして子供たちを惹きける幼稚園教員Sちゃん。
(『飴が大好きなネコちゃん。虫歯になって病院に行く!』の巻)

▼ちなみに白衣を着ているのが私。うさぎのお医者さん役をしました(≧∇≦)
 

▼子供たち、真剣です( ´ー`)ノ


保健師U隊員が作成した資料を元に歯科医師が子供たちに分かりやすく説明し、
Sちゃんが作った特大歯の模型で丁寧に歯磨き指導をしてくれました。

▼力作!!                歯科医師オユーナさん
 

そして!!とうとう染色液を用いて子供たちの歯を染めていきます。

『せんせ~い!染まった~~!?見て見て~~~っ!!』と駆け寄る子供たち

▼愛くるしいとはこの事です( ´ー`)ノ
写真家に徹底してくれたPC隊員Aちゃんありがと~♪
 

 

▼『僕もどう?染まってる?』


▼医師が仕上げ磨きをしているのを横目に、模型で実践。
それを見ながら子供達も必死( ´ー`)ノ

 

唯一親御さん達が来られなかった事が残念な点ではありましたが、
幼稚園の先生に参加してもらえたので、
今後継続していけるよう関わってくれる事を祈ります。

少しでもモンゴルの子供たちの虫歯が減りますように。