先月の事。
突然看護部長から、
『明日、褥瘡(床ずれ)ケアのセミナーを家族病院の看護師達にしてくれないか。』と言われ、
『さすがモンゴル。明日かぁ・・・』と内心焦ったものの、
これはチャンス!!と思い実施しました。
なぜならば、モンゴルでは間違ったケア・処置によって重度の床ずれになってしまうケースが多いからです。
ちなみに家族病院とは日本で言えば『診療所』にあたります。
我がバガノールには4つの診療所があり、管轄地区にて1次医療を担っています。
そんな褥瘡(床ずれ)セミナーを行った数週間後、
家族病院の看護師長から1本の電話がかかってきました。
『あや、今在宅で褥瘡(床ずれ)の患者さんがいるのだけど、
ケアをどのようにしたらいいのか分からないから一緒に行ってくれないか。』
こういった連絡が1つあるだけで、
自分の行っている事が少しずつ受け入れられているんだ・・・と思い救われる。
その一報は、私にとって物凄く嬉しい連絡だった。
しかし実際に行ってみると、物凄い数の褥瘡。
両肩・背部・臀部・両大転子部。全て真っ黒の硬い皮膚に覆われいて、
ケアというよりも処置を要する段階。
臀部は表皮・真皮を含む皮膚欠損、皮下脂肪にまで及ぶ褥瘡。
▼ここまで放置させてしまう現状がここにある
83歳のおばあちゃん。8年前に脳出血で倒れ、それ以来寝たきり。
なんでこんなにまでなってしまったのか・・・。
壊死し、硬くなった黒い皮膚は専用の薬剤で溶かし、
外科的に除去しなければならないのですが、
モンゴルには日本のように『床ずれ専用の薬剤・ドレッシング剤』がありません。
悲しくなるくらい・・・ない。
だからこそ『予防』が必要になってくる。
でも、今は『予防』どころじゃない。
『治療』が必要なのだ。
皮膚を溶かす薬がないのなら、どうやって溶かすか・・・。
溶かすのは難しくても、柔らかくする方法はないか・・・。
その場で判断しなければならない。
先ずは丁寧に微温湯で褥瘡を洗浄。
▼師長さんと洗浄
勿論家族にも見てもらって、毎日洗うよう指導する。
洗浄するシャワーボトルがないため、
ペットボトルの蓋に穴をあけてシャワーがわりにしました。
臀部の褥瘡は皮下脂肪にまで達し『むき出しの状態』なので、
洗うたびに『痛ーい、痛いよー!』と泣くおばぁちゃん。
痛み止めもないばかりか、褥瘡に塗布する薬さえもない。
貧しさのせいで必要な薬が買えない現状。
幸いにもモンゴルでは乾燥したところに塗るといいとされている『ラクダの骨髄からとった脂』があり、 その脂を褥瘡に塗布。
▼褥瘡に脂をかぶせる
ガーゼを置く事で更に褥瘡を乾燥させてしまうので、
空気は通すが水分は逃がさない『ラップ』を貼ろうと試みたが、
その家庭にはラップがない。
いや、バガノールでラップなんて見たことない。
考えること数分。
ゴミ袋を褥瘡の部分に合わせてカットし、
ガーゼを覆うように貼り付けました。
▼
ムレることによって、別の褥瘡が発生しませんように・・・と
神様に祈る気持ちで。
ムレは褥瘡にとって好ましくない環境。
でも、今はこの硬くなった黒い皮膚をふやかす方が最優先。
とにかく家族には毎日微温等で洗浄すること、最低2時間毎にひきずらないよう体位変換すること、栄養のあるものを食べさせてあげること、の3点を指導。
その帰り道、褥瘡に効く軟膏はないかと薬局を訪れた。
褥瘡の写真を見せると、
『これは難しいね』・・・と冷たく一言。
渋々棚から1つ薬を出してくれたけれど、
怪我をした時に塗る軟膏だそうで・・・。
治してあげたいのに、治すための薬がない。
だからって落ち込んでられない。
やれることの最善を尽くす。
おばぁちゃんの苦痛を少しでも取り除くために。
亜矢さんへ
返信削除今帰りました。
ご苦労さまです。
頑張って下さい。
以上
亜矢さんへ
返信削除最善を尽くす心構えの亜矢さんを
遠く日本から応援しています!!
おばあちゃんの床ずれが良くなり
ますように!!!
亜矢さんもお体大事にして下さい。
>太陽さん
返信削除応援有難うございます!
私もおばぁちゃんの褥瘡が良くなる事を願ってやみません。
引き続き頑張ります( ´ー`)ノ
日本では見たこともない重度の褥瘡、
返信削除南ゴビでもよく出会います。
高齢者だけでなく、若い人たちにも。
こちらの病院では、今後このような重度の褥瘡を発生させないために、早期離床プロジェクト、始めました。
>マユミさん
返信削除コメントありがと~うヽ(´▽`)/
確かにここまでの褥瘡は日本ではお目にかかれない。
だからこそ『予防』が必要だと痛感する今日この頃。
まぁ~ちゃんも着々と計画が進んでいるね。
素敵です☆